本当に探偵事務所の代表のむちゃぶりは信じられないときがある。
突然の電話に、突然の探偵行動命令。
フィリピンパブのときもそうだったのだけれど、その突然の名古屋での探偵の調査は時折起こる現象だった。
たぶん、探偵調査も考えすぎて、ある意味冷静な判断を失っているような気もするのだけれど、これのほとんどが成功に終わっていたり、結果につながるようなきっかけになったりするから不思議だ。
そして、その代表からのとばっちりを名古屋で受けのだ。
ある日のこと。
探偵による発信器の取り換えの依頼を受けたようだった。
しかも名古屋で。
いつもなら、この程度の探偵によるお手伝いであれば、ぼくの勉強にもならないから、と断るのが多かったのだが、
代表が電話口で“いつもの倍は報酬もらわんとなー”と言っているのを聞いてしまったぼくは、 その名古屋での探偵調査手伝いを受けた代表を疑わずにはいられない。
だって、ぼくの手元に入ってくる予定の金額提示は1円も変わりがなかったのだから。
その、名古屋での探偵による発信機の交換の依頼は断っても良いものなら断ってしまいたかった。
しかも発信器となると、なかなか昼間に動くのは難しい。
ほとんどのケース、夜中の作業になるのだから。
夜中動く=名古屋での宿泊費が出ない、最悪のパターンだったりする。
現地名古屋で車を貸してくれるらしいが、面倒なので、名古屋に自分の車で行くことにした。
ある程度の場所はグーグル地図で検索し、あとは状況を聞くために昼過ぎに出発する準備をしていた。
名古屋の先方との待ち合わせは、夕方6時。
スムーズに着いたとしても3時間半はかかるので、2時に出れば間に合うけれど、車だと渋滞や事故によってかなり状況も変わるだろうから。
そして入った代表からの電話。
“悪い。すぐに先方に受信機届けて!”ときた。
あの、ぼくもう出発するところだったんですが・・・。
はっとした雰囲気が電話口から伝わってきた。
なんとなく、鬼の首をとったような気持ちになり、代表からの次の言葉を待つ。
自分が勝った気分になりながら。
ところが、あっさりと返ってきた答えは、“今からこれ持って行ってからでも十分間に合うやろ。”
でも人には、特に探偵の仕事をしているものならば、多少の余裕と、もしもにそなえての準備が必要なのでは・・・?と、反論する時間も与えてくれず、とにかく今すぐ事務所に来い、と電話を切られてしまった。
ぼくはゆっくりドライブしたいという思いと、自分の余裕のための時間を盗られたような気持ちで探偵事務所に向かった。
時間に余裕を持って出発するのは社会人としての基本だと思っているので、代表がこれではな…と、思ってしまう。
時間に余裕が無いと、焦りから事故を起こす確率が高いし、なにより段取りが付かない。探偵が焦って事故を起こしては、元も子もないのだ。ましてや、交通渋滞が読むのが難しい名古屋地域へ向うとなれば尚の事だ。 余裕を持って目的地についていたら、それからの動きなどの予定も立てることが出来る。 でも、ギリギリではその時間が持てないことが自分的には嫌なのだ。 しかも近い場所ではないから
更、時間に余裕が欲しいのだ。 それを分かっていない代表とは長く続けられないかも知れないと思いつつ、今日も仕事として割り切る自分がいるのだ。
そんなことが続くと、やってられない!って気持ちが大きくなって、名古屋での探偵業務が増えるのであれば、名古屋手当をつけてもらわなければ、割が合わないな…。と、本気で直談判したい自分がいた。
よく考えてみると、名古屋での依頼が結構あるので、そこのところをきちんと話しておかなければ…と、思ってはいるものの、なかなかできないで月日だけが過ぎていく。
探偵というものに、定時など存在しないあたりで、そこまで遠方ではないが、近くもなくい名古屋の探偵としての業務で、高速道路を使わなくてはならないような状況は結構あるのだ。その時の手当や、夜の時間帯の仕事については特別枠で名古屋での探偵業務手当として、いくらかもらわない事にはわりに合わないと思うようになってきた。
探偵としての仕事に随分慣れて動けるようになってからしか、こんなことも感じないのだろうけど。動けない頃では、名古屋での探偵の仕事を任される事もないのだから。
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