探偵の僕はそれから対象者は何度か車へ行き来し、夜の12時半に車に乗り込む。
名古屋ではなく、田んぼの中の住宅だから、すぐに尾行するわけにはいかず、ちょっと距離をおいてから出発した。探偵の調査だからといって、名古屋のような町中の尾行と違って、直ぐに後を追えないと言うのもまどろっこしいところだが、調査されているのは見つかってしまっては、元も子もないので、慎重に尾行することが必要になってくる。
少し大きな道路に入ってから、すこし距離を縮める。ある意味、名古屋のような町
で自分の身をひそめる事の出来る場所の方が調査はし易いのかも知れないが、それは探偵それぞれの得意、不得意が出てくる所かもしれない。名古屋の街の中の調査が得意な探偵かその逆か…。名古屋の土地が分かっていて、位置関係がはっきり分かっているのならどちらでも動きが取りやすいのかもしれない。依頼された人が自分の知っている土地なら尚更、動きが取りやすいのではないでしょうか。名古屋の探偵調査にしても、そうでないにしても、自分なりのあらかじめ下調べは必要になってはきますけどね。相手の動きにもよるので、何とも言えないが、臨機応変に相手の動きによって自分の動きも変えなければならないところが難しいところであり、探偵の腕の見せどころでもある様に思う。
車はどんどんと明るい方角へ走ってくれたことが有り難い。
30分くらい走ったところで、車は住宅街へと入っていった。
もしかして、釣りと見せかけての不倫現場か?
ぼくは、突然の調査にもかかわらず、血の騒ぐ思いだった。
車は、2階建てのアパートの入口に止まる。駐車場に入らないことを見ると、このまま一緒にでかける相手だということがわかった。
しばらくして、アパートから女性が出てきた。
対象者よりかなり若い。
髪も長すぎもせず、肩あたりまでで適当にウェーブがかかっている。
顔が見えるわけではないのだけれど、そこから美人オーラが出ている。
ぼくは今日、カメラを載せていなかったことを、とても後悔していた。
めちゃくちゃいいアングルなんだがなぁ。
美人さんを乗せた車は、また走り出す。
突然巻きこまれた調査とはいえ、これほど決定的な現場に遭遇したことを嬉しく思うぼくは、ちょっと探偵ちっくになってきたのだろうか。
夜中は特に後ろに走っている車の車種やナンバーが見えないから、相手もあまり気にしないようだし、けっこう楽に尾行できた。
これが、車の通らない田舎道なら、最悪なパターンなのだけれど。
なんて、気楽に構えていると、対象者が高速に向かっていることに気が付いた。
これって、まずくない?
明らかに、ぼくが帰る道とは正反対の方向になってしまいそうだ。
ぼくが帰れるのはいつになるのか?しかも、仮眠1時間半では、どこまで耐えられるのか・・・?
正直、この調査を断念することになる予感までしてきた。
そのままスムーズに対象者は高速道路に吸い込まれていった。
ぼくの気分は最悪。
このまま反対に走って行ってしまいたい。 |